マティアス・ブッフホルツ教授(viola)による公開レッスン2019.11.26in愛知芸大 備忘録


書き始めは12月でしたがそれからあれよあれよと体調不良になり今頃投稿。備忘録なのでお許し下さい。

先日行ったマティアス・ブッフホルツ教授による公開レッスンがとてもよかったので自分のための備忘録としてこちらに書いておきたいと思います。専門的+場所が遠くてドイツ語英語で聞き取れない部分をだいたいの想像で書いている場合もあります。ご了承ください。

マティアス・ブッフホルツ教授による公開レッスン2019.11.26 in 愛知芸大

1人目 ヒンデミット作曲 ソナタOp.11-4

演奏は展開部まで。まず最初に作曲された歴史的背景(国、時代、文化、同年代の作曲家など)と作曲者自身のことをどれだけ理解しているか問われます。例えばヒンデミット自身ヴィオラ奏者であったことやヒンデミットの他に作曲した曲を聴いたことがあるかなど。

これはマスタークラスでは最初に必ず聞かれる項目で、自分が演奏する楽曲のことを学問的な側面からどれだけ理解しているかということです。パスキエ氏や今井信子氏、タメスティ氏が公開クラスを行なった時も必ず最初に問われていました。まず楽曲に対する理解を深めることが大切であることが理解できます。

次に指摘されたのは音の出し方、音の表現方法。楽曲のフレーズにあわせて右手で音を切らないように、まず開放弦で右の表現方法を決めてから左を同時に弾くよう求められます。フレーズは音の強弱、重さ、スピード、テンポ、弓の返しなどあらゆることを含みます。教授自身が演奏しそれを示しながら進みます。

そして左手の音の表現。ビブラートが単音ずつではなく連続して音にかかるようにまずゆっくりかけて練習すること、ビブラートの幅の音程は上に合わせることを指摘されます。また楽曲のフレーズ、音色作りにあわせてその場その場に適切なビブラートをかけることを要求されます。最後にffで演奏する箇所を取り出され右手の表現方法を教授が一緒に演奏しているところで時間切れ。

2人目 レーガー作曲  無伴奏ヴィオラ組曲 No.1

最初の組曲を演奏後まず問われたのは1人目と同じく作曲された歴史的背景(国、時代、文化、同年代の作曲家など)と作曲者自身のこと。レーガーはオルガン奏者で他の交響曲とかいろいろありますが聴いたことありますか?春の祭典はこの曲の2年前に書かれていますが、など(聞き取れる範囲です)

こちらも次に指摘されたのは音の出し方、音の表現方法。1人目と同じく楽曲にあわせた右の表現方法を教授が演奏して示し演奏するように求められます。またこのホールで弾くなら(奏楽堂なので)もっと音を遠くに届ける弾き方をしなければいけない、音をもっと想像(創造)して演奏するようにとも。途中、学生さんの楽器を教授が使って演奏したりもしました。また開放弦で弾くことの重要さを強調され、右手の表現を非常に重要視していました。

左手の大きな指摘はありませんでしたが重音の部分などは左が難しいので右を単純化して左と同時に練習する方法を指導されたところで時間切れ。

3人目 テレマン 無伴奏ヴィオラのための12のファンタジー

3人目の場合は最初から楽器の演奏方法に指摘が入りました。身体を無理して演奏しているので20年経ったら身体を壊してしまう、弾き方そのものを変えないといけないと指導されました。ここでもまず右手、音の出し方、音の表現方法。開放弦で演奏することの大切さ、練習方法など。テレマンは先生がほぼ演奏されながらフレーズの作り方、弓の使い方を指導。

3人目はホールの真ん中で聞いたので先生の話はほとんど聞き取れませんでしたが楽譜もっと読み込んで大きく外に表現してね、というゼスチャーは見て取れました。交代して生徒さんが演奏するもやはり右手が気になるらしく弾きかたをかなり指導されていました。ほんとうはもう1曲あったのですが最初の曲でほとんど時間がなくなってしまい2曲目は時代背景、作曲家が何を表現したかったのかを説明されて演奏しながら指導したところで時間切れ。

まとめ

パスキエ氏今井信子氏タメスティ氏、今回のブッフホルツ氏も公開レッスンの手順はみんな共通でした。まず時代背景、文化、国、作曲者自身の系譜といった歴史的視点、次にどういう音を出してこの曲を表現するのかという右手の視点、そして同じく左手の視点、それらをあわせた総合的な曲に対する表現を問われるという順でした。

ただ、演奏方法については今回のブッフホルツ氏は大変大柄でしかも男性という身体的に恵まれた条件をもともともっているので小柄な女性の生徒さんには少し無理がある部分も見受けられました。ヴィオラは楽器の大きさからして39.5~44.5など個体差が非常に大きい(バイオリンは38㎝でほぼ固定)うえに弦もバイオリンより太いのに奏法の見た目はバイオリンとほぼ同じという非常にめんどくさい個性豊かな楽器です。

そのため教わったことを自分なりに創意工夫して自分なりに取り込む独創性が必要な楽器のため1度の公開レッスンでは本当に時間が足りないと思います。

ヴィオラは演奏することがとても難しい楽器である。

これは昨年エストニアへ行ったときスタドレル氏が生徒さんのレッスンをしているときにぽつん、と言われたことです。スタドレル氏はバイオリンですがヴィオラもモスクワ音楽院で教えられています。今回の公開レッスンでも演奏そのものの難しさが前面に出ておりなかなか短時間ですぐに取り込んで変化するのはよほどの柔軟性と臨機応変さがないと厳しいのではと思わざるを得ませんでした。

私自身は広い奏楽堂でのレッスンでしたので音の違いがより明確に解って非常に勉強になりました。弦楽器はやはり右手がなによりも重要だと再認識できました。


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