【blog】音はつくるもの、響きはついてくるもの
こんにちは。
10月になりました。今年もあと3か月になりました。芸術の秋、大きなことはできなくても心豊かに過ごしたいです。
さてコロナ禍になって動画配信が花盛りです。ますます録音録画の需要は上がっていくのですが生徒さんの中には録音、いや~~~~!!って方が結構な割合でいらっしゃいます。なぜ???
コンサートなど本番で迷子になったりものすごく間違えたー!とかなら、うんうん、次はがんばろう(練習を)ね!という感じですし録音聞きたくないー!!というのは理解できますがそうではなく、なかなか良かった、頑張ったねー!という生徒さんが自分の演奏を聴いて落ち込む、というものです。
本番会場で演奏していた時はもっときれいな音で響きのある音だと思って演奏していたのに違う。。。というのが理由のようですがそもそも音そのものは響きません。音が反響版に反射し空間に広がった結果、聞いている人に響いて聞こえるというのが正解です。演奏している当事者が反射して響いている音を聞きながら弾いたらおかしなことになってしまします。反射音を聞いて普段から練習しているとホールの舞台で弾いたとき自分の音が全然聞こえない状態になったり他の人の音と自分がずれているのがわからなくなる状態になったりします。
ちなみに私のレッスン室はこれでもか、というぐらい吸音材が貼ってあります。普通の天井も低いし窓ガラスも大きい部屋なので練習時もレッスン時も音が天井や壁にあたって乱反射しないようにしてあります。そうすることによって自分の出している音がダイレクトに感じられるからです。ちなみにここで録音配信するためにもマイクに音を集音させるためにも必要です。
音はつくるものです。私のイメージでは音は造形。楽器を弾くと音が目の前に立ち上がってきます。それをこねくりまわす(?)ようなイメージで曲に仕上げていきます。まるで彫刻や陶芸や絵画のように音という素材を使って曲を作り上げます。
ここからは余談ですがその造形過程のイメージを膨らませるために時代の歴史的背景、作曲家の個性、演奏者が作り上げた長年の研究結果(演奏)などを座学し実際に演奏する音楽に反映させていきます。イメージがつかみやすい曲もあればつかみにくい曲もありますし、現代音楽だと作曲者がご存命だったりするので資料集めも解釈も大変になります。さらにこれにプラスして音楽理論(楽曲解析)を座学。弦楽器の場合はピアノと一緒に弾くことが一番多いのでピアノ譜を見て解析、勉強します。アンサンブルやオケの場合はスコアを見て行います。
ちなみに趣味の方は座学やったほうがいいかと言われればやったほうがもちろん良いです。(ただし楽典は必須。これは別の機会に)ただ演奏するうえでは音をつくることが一番大変で、音が自分で作れなければ座学を演奏に反映させることは残念ながらできません。
発表会はホールなので反響版で音は客席へ跳ね返るように設計されています。そのため演奏者の真上に録音機が設置されており録音機は反響音(いわゆる響き)を基本的には拾いません。対して普段練習している自宅の部屋は音が乱反射するため反射された響きを自分の音だと勘違いして練習しがちです。一生懸命やればやるほど間違った方向へ進んでしまい結果、自分が思っているのと違った、となってしまうのです。
理想は音ができるだけ乱反射しないよう吸音がきちんとされる部屋で常に練習することが一番なのですが現実的ではないのでできるだけ反射の少ない部屋で練習しましょう。窓はカーテンをして床はじゅうたんをひく、持ち家でできるなら天井の一部(演奏する真上)や壁の一部に吸音材をホームセンターで購入して貼り付けるなどするとずいぶん変わります。日本の住居は特に天井が低いので。。。クラッシック音楽のルーツは教会なので天井も高いし会場も広いです。海外に勉強に行くと音が変わるというのは気候や文化だけではなく現実の環境も大きいのです。
ちなみにこれは風呂場で歌を歌うと音痴でも上手に聞こえると同じ理屈です。あくまでも響くのは結果で響いたから上手になるわけではありません。それよりも音そのものをつくる感覚をつかめると音色も多彩になり表現の幅も広がる=結果上手に聞こえるとなります。
人間の耳に聞こえる音を録音物で再現するにはとてつもなく高度な技術と耳が必要です。それだけの環境と設備を持たないで自分で行う録音はあくまでも目安なので、どんな状態で録音しているかを踏まえたうえで聞くのが良いと思います。
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